2014年3月6日木曜日

新幹線で救命処置を行う医者はバカか

少し前に話題になりましたが、JR東日本が新幹線や特急の車内に、ちょっとした医療グッズを搭載するという記事。

ツイッター上では、某美容外科クリニックの先生やら救急や弁護士の先生などが、それぞれのお立場からオピニオンを呈されておりました。

コネを通じて法務省に聞いてみたところ、文書で回答がありましたので転載します。
ちなみに協力してくれたのはこの方

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医療従事者による傷病者への心肺蘇生について  法務省

1  路上や列車内・ 航空機内などで傷病者が発生し、居合わせた者が手当てを開始した場合、医療関係の資格を持たない一般市民であれば、 たとえ不幸な転帰となったと しても、 悪意がなければ、民法上・刑法上とも責任を問われないものと承知している。 この認識は正しいか否か。
(回答)
○ 民法上の責任について
一般論と しては、上記事例のような場合、当該一般市民の行為は、義務なく他人のために事務の管理を始めたものとして事務管理が成立する。そして、当該一般市民の行為が、「本人の身体・・・に対する急迫の危害を免れさせるために」 行った事務管理と して緊急事務管理になる場合には、当該一般市民は、悪意又は重大な過失がない限り、損害を賠償する責任を負わないと考えられる (民法第698条)。
(参考条文) 民法 (明治二十九年法律第八十九号)
(事務管理)
第六百九十七条 義務なく他人のために事務の管理を始めた者(以下この章において 「管理者」 という。) はその事務の性質に従い、最も本人の利益に適合する方法によって、その事務の管理 (以下「事務管理」という。)をしなければならない。
2 管理者は、本人の意思を知っているとき、又はこれを推知することができるときは、その意思に従って事務管理をしなければならない。
(緊急事務管理)
第六百九十八条 管理者は、本人の身体、名誉又は財産に対する急迫の危害を免れ させるために事務管理をしたときは、悪意又は重大な過失があるのでなければ、これによって生じた損害を賠償する責任を負わない。

○刑法上の責任について
 犯罪の成否は、捜査機関により収集された証拠に基づき個別に判断されることとなるものであるから、 お尋ねのような仮定の事例について、犯罪の成否をお答えすることは困難(なお、刑法37条1項本文の 「自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対する現在の危難を避けるため、やむを得ずにした行為は、これによって生じた害が避けようとした害の程度を越えなかった場合に限り、罰しない。」 という規定についても同様。)。

2 医師の資格には 「応召義務」が伴うが、市井で遭遇した傷病者にできる限りの応急処置を行うだけでは足りず、不幸な結果が生じた場合にも民事・刑事事上の責任を負わなければならないのか。
(回答)
○ 民法上の責任について
(1)医師法第19条9第1項の診療義務等の性質やこれに伴う責任については、医師法を所管する厚生労働省に確認していただきたい。
(2) 医師が市井で遭遇した傷病者に対して応急措置を行った埋合について も、基本的には1の場合と同様であり、当該医師の行為が、「本人の身体に対する急迫の危害を免れさせるために」 行った事務管理として 緊急事務管理になる場合には、当該医師は、悪意又は重大な過失がない限 り、損害を賠償する責任を負わない。
(なお、医師が、傷病者からの依頼に応じて応急措置を行った場合など、医師と傷病者との間で診療契約が成立したとみうる場合には) 医師は医療契約上の義務を負い、 医師の行った応急処置などに過失があれば、 医師は債務不履行責任を負う可能性がある。)
〇刑法上の責任について
1と同様

3 過去に「 院外で遭遇した傷病者に対して医師が手当てを行ったが、不幸な転帰となったことにより、民法上の責任及び刑法上の責任を問われた裁判等はあったか。 あれば概要等をご教示願いたい。
(回答)
○ 調査した範囲では'、そのような裁判例等は見当たらなかった。

2014年3月4日火曜日

尊厳死議連

先週2月27日に、尊厳死法制化を考える議員連盟の会合が開かれました。

参考までに、現時点での法案を載せておきます。2つの案が議論されており、第一案が「延命措置の不開始」、第二案が「延命措置の中止」に関するものです。


終末期の医療における患者の意思の尊重に関する法律案(仮称)

==<第1案(未定稿)>==
(趣旨)
第一条 この法律は、終末期に係る判定、患者の意思に基づく延命措置の不開始及びこれに係る免責等に関し必要な事項を定めるものとする。

(基本的理念)
第二条 終末期の医療は、延命措置を行うか否かに関する患者の意思を十分に尊重し、医師、薬剤師、看護師その他の医療の担い手と患者及びその家族との信頼関係に基づいて行われなければならない。
2 終末期の医療に関する患者の意思決定は、任意にされたものでなければならない。
3 終末期にある全ての患者は、基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられなければならない。

(国及び地方公共団体の責務)
第三条 国及び地方公共団体は、終末期の医療について国民の理解を深めるために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

(医師の責務)
第四条 医師は、延命措置の不開始をするに当たっては、診療上必要な注意を払うとともに、終末期にある患者又はその家族に対し、当該延命措置の不開始の方法、当該延命措置の不開始により生ずる事態等について必要な説明を行い、その理解を得るよう努めなければならない

(定義)
第五条 この法律において「終末期」とは、患者が、傷病について行い得る全ての適切な医療上の措置(栄養補給の処置その他の生命を維持するための措置を含む。以下同じ。)を受けた場合であっても、回復の可能性がなく、かつ、死期が間近であると判定された状態にある期間をいう。
2 この法律において「延命措置」とは、終末期にある患者の傷病の治癒又は疼痛等の緩和ではなく、単に当該患者の生存期間の延長を目的とする医療上の措置をいう。
3 この法律において「延命措置の不開始」とは、終末期にある患者が現に行われている延命措置以外の新たな延命措置を要する状態にある場合において、当該患者の診療を担当する医師が違当該新たな延命措置を開始しないことをいう。

(終末期に係る判定)
第六条 前条第一項の判定(以下「終末期に係る判定」という。)は、これを的確に行うために必要な知識及び経験を有する二人以上の医師の一般に認められている医学的知見に基づき行う判断の一致によって、行われるものとする。

(延命措置の不開始)
第七条 医師は、患者が延命措置の不開始を希望する旨の意思を書面その他厚生労働省令で定める方法により表示している場合(当該表示が満十五歳に達した日後にされた場合に限る。)であり、かつ、当該患者が終末期に係る判定を受けた場合には、厚生労働省令で定めるとごろにより、延命措置の不開始をすることができる。

(延命措置の不開始を希望する旨の意思の表示の撤回)
第八条 延命措置の不開始を希望する旨の意思の表示は、いつでも、撒回することができる。

(免責)
第九条 第七条の規定による延命措置の不開始については、民事上、刑事上及び行政上の責任(過料に係るものを含む。)を問われないものとする。

(生命保険契約等における延命措置の不開始に伴い死亡した者の取扱い)
第十条 保険業法(平成七年法律第百五号)第二条第三項に規定する生命保険会社又は同条第八項に規定する外国生命保険会社等を相手方とする生命保険の契約その他これに類するものとして政令で定める契約における第七条の規定による延命措置の不開始に伴い死亡した者の取扱いについては、その者を自殺者と解してはならない。ただし、当該者の傷病が自殺を図ったことによるものである場合には、この限りでない。

(終末期の医療に関する啓発等)
第十一条 国及び地方公共団体は、国民があらゆる機会を通じて終末期の医療に対する理解を深めることができるよう、延命措置の不開始を希望する旨の意思の有無を運転免許証及び医療保険の被保険者証等に記載することができることとする等、終末期の医療に関する啓発及び知識の普及に必要な施策を講ずるものとする。

(厚生労働省令への委任)
第十二条 この法律に定めるもののほか、この法律の実施のための手続その他この法律の施行に関し必要な事項は、厚生労働省令で定める。

(適用上の注意等)
第十三条 この法律の適用に当たっては、生命を維持するための措置を必要とする障害者等の尊厳を害することのないように留意しなければならない〟
2 この法律の規定は、この法律の規定によらないで延命措置の中止等をすることを禁止するものではない。

附則
1 この法律は、〇〇から施行する。
2 第六条、第七条、第九条及び第十条の規定は、この法律の施行後に終末期に係る判定が行われた場合について適用する。
3 終末期の医療における患者の意思を尊重するための制度の在り方については、この法律の施行後三年を目途として、この法律の施行の状況、終末期にある患者を取り巻く社会的環境の変化等を勘案して検討が加えられ、必要があると認められるときは、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるべきものとする。
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=第2案(未定稿)=========================
(趣旨)
第1条 この法律は、終末期に係る判定、患者の意思に基づく延命措置の中止及びごれに係る免責等に関し必要な事項を定めるものとする。

(基本的理念)
第二条 終末期の医療は、延命措置を行うか否かに関する患者の意思を十分に尊重し、医師、薬剤師、看護師その他の医療の担い手と患者及びその家族との信頼関係に基づいて行われなければならない。
2 終末期の医療に関する患者の意思決定は、任意にされたものでなければならない。
3 終末期にある全ての患者は、基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられなければならない〟

(国及び地方公共団体の責務)
第三条 国及び地方公共団体は、終末期の医療について国民の理解を深めるために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

(医師の責務)
第四条 医師は、延命措置の中止等をするに当たっては、診療上必要な注意を払うとともに、終末期にある患者又はその家族に対し、当該延命措置の中止等の方法、当該延命措置の中止等により生ずる事態等について必要な説明を行い、その理解を得るよう努めなければならない。

(定義)
第五条 この法律において「終末期」とは、患者が、傷病について行い得る全ての適切な医療上の措置(栄養補給の処置その他の生命を維持するための措置を含む。以下同じ。)を受けた場合であっても、回復の可能性がなく、かつ、死期が間近であると判定された状態にある期間をいう。
2 この法律において「延命措置」とは、終末期にある患者の傷病の治癒又は疼痛等の緩和ではなく、単に当該患者の生存期間の延長を目的とする医療上の措置をいう。
3 この法律において「延命措置の中止等」とは、終末期にある患者に対し現に行われている延命措置を中止すること又は終末期にある患者が現に行われている延命措置以外の新たな延命措置を要する状態にある場合において、当該患者の診療を担当する医師が、当該新たな延命措置を開始しないことをいう。

(終末期に係る判定)
第六条 前条第一項の判定(以下「終末期に係る判定」という。)は、これを的確に行うために必要な知識及び経験を有する二人以上の医師の一般に認められている医学的知見に基づき行う判断の一致によって、行われるものとする。

(延命措置の中止等)
第七条 医師は、患者が延命措置の中止等を希望する旨の意思を書面その他の厚生労働省令で定める方法により表示している場合(当該表示が満十五歳に達した日後にされた場合に限る。)であり、かつ、当該患者が終末期に係る判定を受けた場合には、厚生労働省令で定めるところにより、延命措置の中止等をすることができる。

(延命措置の中止等を希望する旨の意思の表示の撤回)
第八条 延命措置の中止等を希望する旨の意思の表示は、いつでも、撒回することができる。

(免責)
第九条 第七条の規定による延命措置の中止等については、民事上、刑事上及び行政上の責任(過料に係るものを含む。)を問われないものとする。

(生命保険契約等における延命措置の中止等に伴い死亡した者の取扱い)
第十条 保険業法(平成七年法律第百五号)第二条第三項に規定する生命保険会社又は同条第八項に規定する外国生命保険会社等を相手方とする生命保険の契約その他これに類するものとして政令で定める契約における第七条の規定による延命措置の中止等に伴い死亡した者の取扱いについては、その者を自殺者と解してはならない。ただし、当該者の傷病が自殺を図ったことによるものである場合には、この限りでない。

(終末期の医療に関する啓発等)
第十一条 国及び地方公共団体は、国民があらゆる機会を通じて終末期の医療に対する理解を深めることができるよう、延命措置の中止等を希望する旨の意思の有無を運転免許証及び医療保険の被保険者証等に記載することができることとする等、終末期の医療に関する啓発及び知識の普及に必要な施策を講ずるものとする。

(厚生労働省令への委任)
第十二条 この法律に定めるもののほか、この法律の実施のための手続その他この法律の施行に関し必要な事項は、厚生労働省令で定める。

(適用上の注意等)
第十三条 この法律の適用に当たっては、生命を維持するための措置を必要とする障害者等の尊厳を害することのないように留意しなければならない。
2 この法律の規定は、この法律の規定によらないで延命措置の不開始をすること及び終末期にある患者に対し現に行われている延命措置を中止することを禁止するものではない。

附則
1 この法律は、〇〇から施行する。
2 第六条、第七条~第九条及び第十条の規定は、この法律の施行後に終末期に係る判定が行われた場合について適用する。
3 終末期の医療における患者の意思を尊重するための制度の在り方については、この法律の施行後三年を目途として、この法律の施行の状況、終末期にある患者を取り巻く社会的環境の変化等を勘案して検討が加えられ、必要があると認められるときは、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるべきものとする。