2014年2月1日土曜日

溺水ハウス

救急車で来ても、「ああ、残念だけど仕方ないね」とされてしまうシチュエーションがある。

その一つが風呂に沈んでおぼれた状態。

「いつも元気な90歳の婆ちゃんが、いつものように夕飯を食べて、食後に市販の風邪薬を飲んでから風呂に入った。いつまでたっても上がってこないので、家族が見に行くと湯船の水面に顔面を伏せた状態でぐったりしている婆ちゃんを発見。救急車で搬送するもあえなく死亡確認。」


「風呂で寝ると死ぬぞ、年寄りは特に死ぬからな」とぼくは外来で力説するようにしている。市販の総合感冒薬に含まれる抗ヒスタミン薬は眠くなる。老人だとまさしく「こうかはばつぐんだ!」

湯船が大きいときには仰向けの状態で風呂のお湯の中にずり落ちる。体育座りするような狭い風呂だと、カクンとうなだれて水面から鼻やら口からお湯が入って溺死だ。

追い炊き中に寝てしまうとなおさら悲惨だ。爺ちゃん・婆ちゃんの世帯では昔ながらの「バランス釜窯」とかいう、いい湯加減になったら手動で止めるタイプの風呂が多いと思う。これで、入浴中に寝てしまっておぼれ、そのままエンドレスにお湯が沸くとどうなるか。誰かが発見するまでぐつぐつ煮出されてしまう。ぼくが検案したケースだと、まさに豚骨スープ状態になっていた。
そのままお湯がなくなるまで沸かされれば、空焚きになって風呂から出火し、焼死体で発見される。

「カゼ薬、飲むなら(風呂)入るな、入るなら飲むな」である。

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